仏教典(きょうてん=宗教上の基本となる書物)のひとつ「雑宝蔵経」(ぞうほうぞうきょう)の中の『 無財の七施』で、「七種施の因縁(いんねん)」と説かれている(「仏説きたまふに、七種施あり、財物を損せずして大果報〈だいかほう=大変な幸せ。きわめて巡り合わせのよいこと〉を得ん」)。以下の、眼施、和顔施、言辞施、身施、心施、床(牀)座施、房舎施の七つ。

 

布施(ふせ)にもいろいろあり、たとえお金や社会的地位が無くても世の中に十分役立つことが出来るということ。つまり、金品を施す財施(ざいせ)ばかりが布施ではないという意味。

 

「長者の万灯(燈)よりも、貧者の一灯(燈)」=金持ちの多くの寄進よりも、貧しい者の心のこもったわずかの寄進のほうが、功徳(くどく=現世・来世に幸福をもたらすもとになる善行)が大きい。形式よりも真心が大切であるということのたとえ。単に「貧者の一灯」ともいう。

 

 因縁とは、物事が生じる直接の力である因と、それを助ける間接の条件である縁のこと。すべての物事はこの二つの働きによって起こると説く。

 

布施とは、梵語(サンスクリット語の異称。その起源が造物神ブラフマン〈梵天〉にあるというインドでの伝承に基づく、中国や日本での呼称)では「檀那(旦那)(ダーナ)」といい、慈悲の心をもって、他人に財物などを施すこと。ブッダを目指す菩薩が修めなくてはならない、6つの実践徳目である六波羅蜜.ろくはらみつ〈「ろっぱらみつ」とも〉の一。金品を施す財施(ざいせ)、仏法を説く法施(ほうせ)、恐怖を取り除く無畏施(むいせ)の三施がある。布施波羅蜜とも。

 

六波羅蜜とは、仏教の二大流派の一の自己の解脱だけを目的とするのでなく、すべての人間の平等な救済と成仏を説き、それが仏の真の教えの道であるとする大乗仏教(だいじょうぶっきょう。大乗仏教の最も重要な経典の一が「法華経〈ほけきょう・ほっけきょう〉という⇔上座部仏教〈じょうざぶぶっきょう〉・小乗仏教)における六種の修行。菩薩(ぼさつ)が涅槃(ねはん)に至るための六つの徳目。布施(ふせ)・持戒(じかい)・忍辱(にんにく)・精進(しょうじん)・禅定(ぜんじょう)・智慧(ちえ)。六度ともいう。

 

 

1.眼施(げんせ)=慈眼施(じげんせ)ともいう。「常によいまなざしで見て、険しい目で見ない」(経典)⇒周りの人たちに優しい、思いやりのある慈しみの目で接すること。

 

2.和顔施(わごんせ)=和顔悦色施(わがんえつじきせ)ともいう。「悪い感情をあらわにして険しい表情をしない」(経典)⇒和やかな顔、喜びの顔、希望に満ちた顔で接すること。

 

3.言辞施(ごんじせ)=愛語施(あいごせ)ともいう。「柔らかい言葉を出し、粗暴な言葉を使わない」(経典)⇒気持ちの良い、明るい言葉、温かい言葉で話しかけること。

 

4 身施(しんせ)=捨身施(しゃしんせ)ともい。「起ち迎えて礼拝す」(経典)⇒骨身を惜しまず、真心をこめて奉仕すること。

 

5.心施(しんせ)=心慮施(しんりょせ)ともいう。「上記のような内容で(眼施から身施まで)布施したとしても、心に思いやりがなければ本当の布施にならない。心に思いやりがあれば、深く供養を生ずるであろう」(経典)⇒思いやりの心を持つこと。手の気持ちを考えた心配りで、親身になって真心を込めて行うこと。

 

6.床座施(しょうざせ)=「席を作って座らせる、あるいは自分がすでに座っている席を譲って、座っていただく」(経典)⇒他の人のために気持ちよく座席や場所をゆずること。

 

7.房舎施(ぼうしゃせ)=「家の中に迎えて過ごしてもらう」(経典)⇒温かく自分の家に迎えたり、雨宿りの場所を提供すること。

 

 

雜寶藏經卷第六

 

(七六)七種施因縁

佛説有七種施。不損財物。獲大果報。

 

一名眼施。

常以好眼。視父母師長沙門婆羅門不以惡眼。名爲眼施。捨身受身。得清淨眼。未來成佛。得天眼佛眼。

是名第一果報。

 

二和顏悦色施。於父母師長沙門婆羅門。不顰蹙惡色。捨身受身。得端正色。未來成佛。得眞金色。

是名第二果報。

                 

三名言辭施。

於父母師長沙門婆羅門。出柔軟語。非?惡言。捨身受身。得言語辯了。

所可言説。爲人信受。未來成佛。得四辯才。

是名第三果報。

               

四名身施。於父母師長沙門婆羅門。起迎禮拜。是名身施。捨身受身。得端政身。長大之身。人所敬身。

未來成佛。身如尼拘陀樹。無見頂者。

是名第四果報。

               

五名心施。

雖以上事供養。心不和善。不名爲施。善心和善。深生供養。是名心施。捨身受身。得明了心。

不癡狂心。未來成佛。得一切種智心。

是名心施第五果報。

             

六名牀座施。

若見父母師長沙門婆羅門。爲敷床座令坐。乃至自以已所自坐。請使令坐。捨身受身。

常得尊貴七寶床座。未來成佛。得師子法座。

是名第六果報。

            

七名房舍施。

前父母師長沙門婆羅門。使屋舍之中得行來坐臥。即名房舍施。捨身受身。得自然宮殿舍宅。未來成佛。

得諸禪屋宅。

是名第七果報。

             

是名七施。雖不損財物。獲大果報